チームの成長とミーティング

チームの成長

困難な中でやっている姿への感銘とミーティングへの違和感

 2012年度から2014年度の3ケ年にわたって行われた厚生科学研究【研究課題データ】東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究 | 日本の研究.com東日本大震災の被災地における地域精神保健医療福祉システムの再構築に資する中長期支援に関する研究での被災地支援のお仕事も今回で終了となります。
 私は相馬広域こころのケアセンターなごみさんへのコンサルティングというお仕事を仰せつかり、なんだかよくわからないまま(・・・なんて言っていいのかな?)、やってきました。
 初年度の支援のときには、被災地の現状に打ちひしがれながらも、ホスピタリティ溢れるなごみの皆さんの一生懸命さに心を打たれました。自分自身、ゼロからACTチームを立ち上げていった経験があるので(単なるスタッフなので新居先生と山田さんを差し置いて、「立ち上げる」という言い方は適当ではないかもしれません)、当時のなごみの皆さんの苦労はある程度「あるある」という感じがありました。しかし、そのような多職種チームの立ち上げに加えて震災支援です。被災されているスタッフ、被災されているスタッフを気遣う被災はされていないスタッフのみなさんに、ただただ頭を垂れるしかない・・・というのが率直な気持ちでした。


 でも、それではお仕事になりません。チームの成長のお手伝いのために来たのに「いやいやみなさん、お疲れさまです」だけ言っていたら何のために来たのかわかりません。ということで、今後のチームの成長のために必要な・実現可能なことを探しました。
 そのうような背景のなかで、どうしてもこれは改めたほうが良い!!!!! と思ったのがチームのミーティングで展開される報告や検討の質と量の乏しさでした。

病棟の申し送りみたいな報告(って病棟って知らないんだけど、あくまで想像、充実した濃いミーティングをしている病棟のみなさんごめんなさい)で、こんな報告じゃあ、ミーティングの意味が薄れてしまう、チームでみんなでせっかくやっているんだから、チームの全員が顔を合わせるミーティングをもっと充実させていかなくてはいけないんじゃないか・・・

と強く思いました。

成長したなあと感じること

 今回、最後ということもあり、総括のお話をさせていただきました。
 おせじぬきで、本当にみなさんが努力されて、良いチームになってこられたのだなあと思います。もちろん、「いろいろなこと」はあるのだけれども、それは人間の集団であれば当然です。また、この日本で精神障害のある方への多職種のアウトリーチチームの実践がほとんど蓄積されておらず、チームビルディングのノウハウもほとんどない中での歩みです。「あるべき方向」が何なのか、暗中模索のなかでの日々です。チームのスタッフ同士、誰がどんなストレングスを持っているのか、どのように役割分担していけば良いのかもわかってきたし、成功体験を積み上げて、「こんなふうにやっていけば良いのだな」という経験知とカンのようなものが、スタッフレベルでも、チームレベルでもできあがってきたのではないでしょうか。

 また、ミーティングも本当に豊かになりました。ユニークな報告が増えている、その報告をきけば「ああ、ああ、あのひとね」とすぐわかるような、笑いも多くなったし、報告にみんながいろいろな反応をするようになりました。特に、2日目のミーティングでは、「こうしたらどうかな」みたいな発言もみられて、「ミーティングでパパっとプチ問題解決」も始まったように思いました。

「ミーティングは多職種チームの要」

 では、どうして私はそんなにミーティングにこだわるのでしょうか?
 ・・・まあ、それが一番気になったからなんですけど(笑)、それではあまりに無責任なので、多少いろいろ調べました。そうしたら、ありました、ありました。三品先生の重い精神障害のある人への包括型地域生活支援: アウトリーチ活動の理念とスキル (学術叢書)の208ページに、「ACTチームはミーティングが要」とありました。なごみさんはACTじゃないけど、多職種アウトリーチチームである以上、同様に考えて良いのではないでしょうか。また、野中先生の多職種連携の技術(アート)―地域生活支援のための理論と実践の139ページにも、「良質なチームをつくりあげるためには、(略)医療保険福祉領域におけるチームの訓練として最良の方法は日常的に実施するケア会議」とありました。三品先生と野中先生がおっしゃっているのであるから、自信をもって、ミーティングが大切なんだ!!と言えますよね(^o^)/

 チームを成長させるための方法はたぶんいろいろあるのだと思います。私が知らないだけなんだと思います。
 ただ、毎日毎日のことだし、スタッフ一人ひとりが心がけて少しだけ頑張ることで、容易になしとげられるという点では、ミーティングの報告をより充実させるという方法は有効なのではないかと思います。そして、「報告をより充実させる」ということは自分の実践を振り返ることでもあるし、端的にまとめることでもあるし、「特にみんなに聴いてもらいたい、相談したいことは何か」というふるいにかけることでもあります。全部を充実させたら時間が足りなくなってしまう。そのなかで、どのようにメリハリをもたせるかという問題にもいきあたります。

 以下の表は、野中先生の本の3レベルに、私が多少改変を加えて作ったものです。
 日々の朝ミーティングが充実してきたら、おそらくチーム全体の運営に関するミーティングも変わってきます。形式的なミーティングをやることの空虚さにみんなが耐えられなくなってくるはずです。
 ということで、朝の日々のミーティングはミーティングだけの問題にとどまらないのではないでしょうか。

 DeNA創始者南場智子さんの不格好経営を読むと、本当に優れた人同士の火花が散り合うようなチームの凄さを感じます。・・・まあ、そこまではムリだとは思うのですが、より深く厚く広く考えて決めていくミーティングができるチームが、この日本で一つでも多くなると、もっともっと日本がよくなる・・・っていつの間にか、なんだか大きなおはなしになってしまいましたね。