ACT−Aile立ち上げ準備室の方の見学感想

3月24、25日に千葉のACT−Aile立ち上げ準備室の方が見学にみえました。宮崎さんの感想です。

 研修初日、さっそく訪問に同行しました。訪問先の方は統合失調症。ご病気の故か、話が冗長としていて要領を得ませんでした。訪問スタッフは、当日6〜7軒の訪問予定があったようで、忙しそうでした。しかし、そのスタッフは腰を下ろし、利用者さんとしっかり向き合って、辛抱強く話を聞いていました。一生懸命やりとりをする、その二人の姿が印象的で、写真に収めたい、と思ったくらいでした。
 その後、なぜその場面が印象的だったのかと考え、思い当たった事があります。それは、私の恩師が、外来の待合に掲げておられた、小さな1枚の絵。近代医学の父と言われるウィリアム・オスラー博士が、死期の迫った女の子のところに、往診に行った場面を描いたものでした。その絵の中で、近代医学の父たるオスラー博士は、彼女のベッドサイドで、人形遊びをしてみせていました。オスラー博士は、患者さんと話すときには必ず、目線を同じ高さにしていたといいます。その絵でも、二人の目線の高さは同じでした。
 訪問先で、スタッフと利用者さんのやりとりに印象を深くしたのは、どうやらこの絵のイメージが背景にあったからのようです。多忙の最中にあっても、目の前の一人を大切にする。その実践が、たしかにそこにはあったと思います。そのスタッフは腰を下ろし、利用者さんと同じ目線の高さで、その眼をきちんとみて、懸命に耳を傾けていました。
 研修二日目は早くも最終日。訪問同行の道すがら、スタッフに尋ねてみました。「困ったときに、その都度悩むのは大変だから、やり方を決めておこうとは思わないか」。そのスタッフは即座に否定。その都度、悩んで考えた方がよいというのです。思考停止をきらう勇敢さ。そのスタッフは哲学者だと思いました。
 ACTでは実際的な活動が多く、それはとても重要で、ACTのACTたるゆえんでもあります。しかし、それだけでは薄っぺらい、軽薄な支援になってしまう。それらの活動を、豊かなる枝葉だとすれば、それらを支える根っこのようなもの・・・精神性・哲学性が必要だと感じていたところでした。そのような哲学性を、スタッフの方々が持っていることに、今回、深い感銘を受けました。哲学者が実践するACT。このようなスタッフに支援を受けている利用者は、幸運だと思います。
 私たちACT−Aile立ち上げ準備会は、今年の秋から、千葉県鎌ケ谷市において、ACTを始めます。理想は、「一人一人を大切にする文化」を作ること。その理想を実現するために一番重要なのは、実践にあたる私たちスタッフ一人一人の成長であると思っています。私たちも、ぴあクリニックのようなクオリティと哲学性を持って活動に臨みたい。そのために、今後とも、ぴあクリニックの皆さんと交流をかさね、啓発を受けていきたいと願っています。今回の研修、本当にありがとうございました。


クリスマスローズにも種類がいろいろありますね。