住みなれた地域で暮らしたい!!

 長くなってしまいました。書き続けるのが申し訳ないのですが、どうしても伝えなければいけないことがあるのです。まあ、いつでもいいので読んでください。
 それは、

「住みなれた土地で 自分らしく暮らしたいという気持ち」

という気持ちが、いかに強いか、そしてその気持ちがいかに人を支えてくれるかといことです。
 今紹介したように、この地域は家で暮らすことが可能なところとしては最も海に近い地域です*1津波の脅威にさらされ、家が壊れ家財道具が流され、亡くなった方もいらっしゃいます。
 それでも、120くらいある世帯のうち、3分の1程度は、家を補修してまたここに住みたいと言っています*2。「補修」といってもさまざまですが、中には私の身長よりも高いところまで水に浸かってしまったお宅まであります。被災直後は畳も家財道具も水につかり使い物にならず、床は破れドアは壊れ窓ガラスは割れ、泥やがれきで埋まってしまったような状態です。今でも壁に線を描いたように、水につかった跡が茶色くくっきりと残っているお宅もありました。


 でも、それでもみなさんおっしゃいます。

住みなれた土地なんだよ。ここでずっと暮らしてきたんだよ。今さら他では住めないよ。


と。
 そして、住みなれた土地で、この家で暮らしたいという思いが、家を掃除し家を直し、近所のみなさんと頑張るエネルギーを生んでいるのです。この地域をもう一度再生しようという強い力を各コミュニティに与えてくれています。
 人にとって、住む家とは、地域とは、こんなにも大切なんだ、こんなにも力を与えてくれるものなんだということに心を打たれました。

 と、同時に。
 私たち、医療・福祉関係者は、厳しく反省しなくてはいけないのではないでしょうか。
 人にとって、住みなれた地域から、家から離されることが、いかに過酷なことなのか、希望しない場におかれることが、人にとっていかに理不尽なことか。

 私の背丈よりも高く浸かった水の跡を記す線。その茶色い線の横で、「ここに住みたいんだよ」と語るおじさんの顔を、一生忘れたくありません。意にそわない入所・入院は可能な限り防ぎたい。そうでなければ、私がここに来た意味がない。
 そう強く、強く、思います。

*1:正確に言うと、そのような地域が海沿いにベルトのように広がっている

*2:3分の2のお宅は戻ってこないようです。全壊したお宅もたくさんあります。家は残っていても、津波が襲ってくるのをそこで見て、人や家が流されるのを見てしまった人はもう住みたくないという場合が多いそうです。